「相模原事件の判決」を受けて(福祉経営余話)

文責:すぎのこ会理事長 岩崎俊雄

 3月16日午後、いわゆる相模原事件の判決が言い渡されました。これを機に、改めて、犠牲となりお亡くなりになられた皆様のご冥福と、傷害を負われた皆様のいち早いご回復を心からお祈りいたします。
 事件に関しては、19人の命を奪ったということは周知の事実であり、大麻精神病、パーソナリティ障害等の診断を受けていた被告の責任能力が問えるかどうか、が最大の争点となった裁判でした。結果は、大方の見方通り、死刑の判決でした。二人の裁判員が結審後に辞任するという異例の裁判でもあり、裁判員となられた方々も苦渋の決断をせざるを得なかったのではないかと、ご労苦に改めて敬意を表する次第です。
 この判決を受け、事件直後から「事件の検証及び再発防止策検討チーム」の一員として関わったひとりとしては、複雑な想いを抱かざるを得ませんでした。現行の法制度の下では、死刑判決は当然なものと思いつつも、被告も障害者のひとりで、事件に至るまでに多くのSOSを発信していた事実から、彼に寄り添った支援をすることで事件を未然に防ぐことができなかったのだろうか、と自問自答しています。
 一方、前述した検証チームの報告に対しては様々な批判が続出し、精神保健福祉法の改正案も廃案となったことは周知のとおりです。しかし、議論の中で、特に私が提唱した『心のバリアフリー学習の推進』については、文科省がいち早く「心のバリアフリー学習推進会議」、続けて「心のバリアフリー作成検討会」を立ち上げ、その結果を受け、学習指導要領を改正する等国を挙げて取り組むこととなりました。お互いの違いを認め合い、共に生きる社会を創るためには、教育の果たす役割が大きいという主張が認められ、大変嬉しく思っています。同時に、相模原事件の再発防止を含めた共生社会実現のための文科省の対応に、改めて感謝する次第です。
 今回の裁判に関して言えば、事件の検証に十分な審理が行われたとは言えず、多くの課題が残されているものと考えています。この事件を風化させず、今回の判決を教訓として、国が目指す『地域共生社会』、国連が提唱する『誰ひとり取り残さない持続可能で多様性と包摂性のある社会』の実現を目指す、地道な粘り強い取り組みが求められているのではないでしょうか。
 相模原事件に当初からかかわったひとりとして、今回の裁判結果を受けてコメントを出すことが責務であると、思いつくままに書きとめました。  

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